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マネージャーは知らなかった、彼の欲望
第1章 覗いてはいけないもの
その“あのとき”がどの瞬間なのか、聞けなかった。

「……バカね」

私はそう一言だけ残して、玄関のドアを開けた。

冷たい夜風が頬をかすめたとき、ようやく息ができた気がした。

だけど、足元がふらついたのは、きっと風のせいじゃない。

「……危なかった。」

私は、ほとんど息を吐き出すようにそう呟いた。

ヒールの音がマンションのエントランスに響く。

夜風に当たりながら、自分の鼓動の早さに驚く。

あのまま一歩でも動いたら、私は恒星の手を取っていたかもしれない。

あの目。あの声。あの熱。

「落ち着けって、私……」

私は胸に手を当てる。けれど、落ち着かせるどころか、その手のひらの下で高鳴る鼓動はどんどん速くなるばかり。

恒星はただのタレント。私はマネージャー。

その境界線を越えたら、すべてが壊れる。わかってるのに。
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