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砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
第1章 夜伽なき王と、影の侍女
ユリーナ様の遺品は、カリーム王の意向でまだ宮殿に残されていた。

処分も、保管庫への移動も許されず、部屋の一角に、まるで今も彼女が生きているかのように静かに並べられている。

私は、宮殿に残ってその遺品を管理する者として任じられた。

誰もが忘れていく中で、私だけが彼女の想い出に触れることを許された。

こうして、ユリーナ様の遺品をひとつひとつ磨いていると――

それが、どれだけの愛に包まれていたかが手に取るように分かる。

この花瓶もそう。

カリーム王が初めてユリーナ様に花束を贈った際、その花を生けるために特注させたと聞いた。

やわらかな曲線を描く白磁に、繊細な金の細工が施されている。

まるで、ユリーナ様の細く美しい手指を象るような模様。
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