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第1章 誘い

間近のベージュの透ける生地から、智恵さんの腕が見えていた。生地はゆとりを失くし、ピンっと伸び、私の体を包んでいた。彼女の胸が私の体に触れているのを感じた。私は何とか平静を装うとするが、胸の鼓動が激しくなるのを止められなかった。

彼女はふっと息を吐き出していた。鼻から抜ける息が私の首に当たっていた。その熱で私の顔が赤くなり、額から汗が噴き出してくるような感覚だった。

きっと周りの乗客は、反対車線を走る電車とすれ違い、大きな音しか聞こえていなかっただろうだろう。彼女の微かな声は他の乗客に聞こえなかったはずだった。そう思い首を左右に回した。その際に黒のワンピースに覆われた彼女のボディーラインに目を奪われてしまう。

近くには先程と同じく目を細める智恵さんの笑顔があった。智恵さんは私の腰に回した腕をさらにギュッとしてくる。