パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第8章 身も焦がれつつ　－卯月－

『夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり　－俊恵法師－
』

　いとしい人を想って明けやらない夜を過ごしている、という沢田の返信を早朝になって気づいた志織は、すぐに彼にLINEを送った。

＞＞早くお会いしたいです

重い肩の荷を下ろした志織は一刻も早く沢田に逢いたかった。

　そして力いっぱい抱き締められたかった。



「湯島天神へお礼のお詣りをしに行こう」

　沢田のことばに迷うことなく志織はうなずいていた。

　志織個人として沢田に逢うのは風邪の見舞いに行って以来だった。

　わずか1か月半ほどの時間が、殊のほか長かったように彼女は感じていたが、彼の顔を見るとそれもすぐに消えた。


　
「ずっとお逢いしたかった…」

　散りかけの梅を見ながらお詣りを済ませた志織は沢田に連れられるまま、お茶の水への道を歩き、ある老舗ホテルの部屋で沢田の腕の中に抱かれていた。

「長かったね…」

　志織の髪をそっと撫でながら沢田もつぶやく。

「長かったです…」

　言い終わらないうちに志織の唇はふさがれた。

　つぐんでいた口が彼の舌で開けられると、貪るように吸い合いながらふたりの舌が絡みつき、むせぶような時間が流れる。
　それだけで志織は下着に滲み出るものを感じていた。

　お互いの首を捻じ曲げながら長い口づけが続き、背中から両方の胸を抱き締められた志織からは堪えきれなくなった声が洩れる。

「ああっ…　あああ…」

「しおり…」

「さわださん…」

　耳元で名前を呼び合うくぐもった声が、堪えていたふたりの官能を揺り起こした。

　胸を包む沢田の手を覆う志織の手は行き場を失って彼の二の腕にしがみつく。

　沢田の唇が顎下から首筋へと滑るようにゆっくりと動いていくたび、志織は背中に電気が走るような感覚に襲われた。

　やわらかいニットワンピースの上から胸を愛撫していた手の一方がやがて裾へ下りてスカートを手繰り寄せると、思わず閉じた脚の腿に沿いながら上がってくる感触がストッキング越しにざわざわと志織に伝わってくる。

「だめ…です…」

　申し訳のようにして沢田のその手を押さえながら、片手は首筋に口づけを続ける彼の首の後ろへ回ってしがみついていた。