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恋かるた
第9章 われても末に -皐月-

恥ずかしげに立てた膝が開かれて、彼が入ってくる。
手を添えられて、いつも優しい沢田が猛々しく入ってくる。
花びらを押し開きながら、ゆっくり入ってくる。
遠慮するように、まるで躊躇うように…
少し入っては引き、うかがうように少し奥へ…
去るように引いては、また奥へ…
志織の上げる声がそのたびに高く大きくなっていく。
そして、最後に大きく引いて志織の膝裏を深く抱えた彼は、心を決めたかのように彼女の奥の壁までひと息に突き進んだ。
「ああぁ… あたる… あたる…」
「しおり… しおりっ!」
深くひとつにつながり、大きく眼を見開いて見つめ合うと次の瞬間ふたりは、一気に眼の前の頂上への最後の階段を駆け上った。
決して見せたことのないような昂ぶりで沢田が激しく志織を突き、それに応えるように志織も夢中で腰を振った。
志織の膝を抱えていた沢田がその腕を解き、彼女の首の後ろに回して抱きしめる。
深く曲げた脚を挟みつけるように沢田の腰に絡ませて足首を組んだ志織は、両腕を彼の首に巻きつけて頬を寄せ合う。
唇が重ね合わされ、激しく吸い合いながら舌がもつれるように絡み合った。
少しでも躰の多くがひとつにつながっていたかった。
ベッドの激しく軋む音が静かな部屋に響きわたり、くぐもった呻き声が洩れた瞬間、ふたりの唇が離れた。
ふたりを高波が襲った。
「しおりっ… いくよ…」
「ああっ! い、い、いく、いくいくいくいくっ いくっ!!」
最後に強く突かれて沢田の躰の動きが止まったかと思うと、息が止まるほど強く抱きしめられ、自分の中で彼が一瞬大きく膨らんだ気がしたその時、立て続けに放たれた熱いものが奥の壁に打ち付けられるのがはっきりとわかった志織は、同時に絶叫していた。
初めて抱かれた頃には恥ずかしくて口にできなかった絶頂の叫びは、もう理性で抑えられることはなかった。
『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ -崇徳院-』
抱きしめられて自分の上で大きく息をする沢田の躰の心地よい重さを感じながら、愛おしい人と今は別れていても、いつかまた一緒になるのだ、というこの歌をふと思い出した志織は朦朧とする意識の中で、今日はもう言わなければいけない、と心に決めるのだった。
-完-

