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恋かるた
第9章 われても末に -皐月-

目くるめく沢田との時間を想い起こしながら幸せな眠りにつこうとしていた志織は、予期しなかった手紙の文面で水をかけられた気持ちになったが、その冴えてしまった頭でカーテンの隙間から差す薄明りを見ていると数時間前の情景が甦ってきた。
のたうち回るようにして彼の背中に傷をつけてしまった指先…
高く上げて組み、彼の腰を強くはさみつけていた両脚…
そして、2人の子供が無事に生まれたあとパイプカットを受けたという彼から、自分の躰の中心の奥壁に何度も放たれた熱いほとばしりの感覚…
どれもこれも10年以上忘れていたことだった。
落ち着いて振り返ると恥ずかしくてたまらなかったが、胸に手を置いて思い返しているうちに志織はまた躰が火照ってきた。
(あんなにいっぱい愛されたのに…)
満たされたはずの躰の芯が疼く。
両の掌が胸を包む。
その先端の小さな粒は指で転がされるうちに少しずつ膨らみ、固さを帯びる。
やがて片方の手は胸を離れると腹から腰を彷徨うように徘徊していく。
(人に見せるための下着を買うことなんてずっとなかった…)
そう思いながら、その手は躊躇いながらショーツをそっとくぐった。
叢の中をたどりながら指先はまっすぐに花びらに向かうと、滲み出している蜜をすくってめしべの先端にゆっくりと塗り付ける。
ゆっくりゆっくり刷り込むように塗り付ける。
昼間彼が愛してくれたのと同じようにして志織は自分のめしべを繰り返し愛していく。
快感を求めるのではなく、彼の指を思い出したくて。
溢れる蜜をすくっては、めしべに与えて、こする… こする… こする…。
(そんなにしたら… ああ… い… いい… ああ… さわださん…)
背中がベッドから浮く。
腿に力が入って震え、つま先が一瞬開いたかと思うとピンと伸びて小さく痙攣した。
その瞬間止まっていた息を大きく吸い込みゆっくり吐いて志織は眼を開いた。
沢田の穏やかでやさしい笑顔を押しのけるようにかつての夫の顔が割り込んできた不愉快を感じながらその夜、志織はいつの間にか眠りに落ちていた。
翌朝、瑞穂は手紙について何も話題にしなかった。
聡明な子だからきっとその内容を察しているんだわ、と志織は感じると同時に、瑞穂のことも考えないと、と冷静に思うのだった。

