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恋かるた
第9章 われても末に -皐月-

(離れたくない…)
絵筆で丁寧に絵の具を混ぜるようないつもの優しい愛撫で、フィナーレのための前奏曲のピークをひと月ぶりに品川のホテルの沢田の腕の中で何度も迎えたあと、志織は息を整えながら思っていた。
彼がどのように考えているのか知りたかったが、自分から口に出せないでいた。
独立したとはいえ、彼の2人の息子の考えも知る必要があった。
財産のこと、将来の相続問題のこと、結婚とはそういう面倒なものだということを、離婚したときに志織は身に染みて理解したのだ。
もし、元の夫と復縁したとしても沢田と別れることができると思えなかった。
(いっそのこと、今のままの関係でもいいのかもしれない…)
そんなことを漠然と思い始めているうちに、沢田の手が再び志織の躰をいとおしげに愛撫し始めた。
彼の肩に預けた首の後ろから志織の上半身を抱いている腕がゆっくりと動き、掌で胸をでき上ったばかりのふわふわのパンをくるむようにして包まれると、親指と人差し指の間でやわらかく挟みながら繰り返し摘ままれる。
大切にしているものを慈しむように、どこまでも沢田の愛撫はやさしかった。
耳朶を甘噛みしながらささやいていた舌先が耳元から首筋をついばんでいたかと思ううち、その指の間で膨らんだ胸の蕾にやってきて唇に咥えた。
軽く吸われながらその先端が舌先で転がされる。
もう一方の手はうっすらと茂る志織の叢を掃きながら、時折その生え際を挟んでそっと抜くような素振りで引かれると志織はたまらず彼の背中に爪を立てそうになった。
指先がささやかな叢をかき分け、蜜が溢れる泉に咲く花びらを滑るように開いていく。
5月になって羽化したばかりの蝶が舞うように、熱くとろけた花びらに隠れていためしべと指が戯れる。
戯れる… 戯れる…
羽ばたいては舞い、舞ってはついばむ…
濡れそぼって花びらは開き、誘うように蜜がとめどなく溢れる…
こらえきれなくなった志織が絞り出すように小さな悲鳴を上げた。
「ほしいの… あなたがほしいの…」
間近で見つめていた沢田を見上げながら、眉を寄せ呻くように訴えた志織に彼がやわらかな微笑みを添えて小さくうなずいた。

