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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第15章 不可逆的ラベリング
「奈津子…ナツ…。」

裕樹はその名前を確かめるように口にしながら、ナツの柔らかな乳肉を鷲掴みにした。

今まで楓と呼んできた偽りの名前を上書きするように。

「んっ…あ…」

ナツから零れ落ちる嬌声が、先ほどとは違う響きで裕樹の耳を撫でてくる。

名前が明かされた瞬間、二人の間にあった匿名という膜が剥がれ、雰囲気が変わった。

ナツの露出は増えていないにも関わらず、丸裸になった関係がその色艶をさらに濃くした。

裕樹の息は荒くなる一方で、その訳を理解するのに思考が追いついていない。

楓ではなくナツ──その事実が身も心も距離を近づけていく。

裕樹はナツの体を包み込むように抱き寄せた。

「僕は…裕樹。僕の本当の名前。」

裕樹が自身の名前を口にした瞬間、静寂が訪れる。

一度きりだったはずの関係が、ここから先、何度も混ざり合う未来を示すような抱擁。

呼吸で膨らむ裕樹の胸を、ナツの柔らかい体がすべて受け止めていた。

「裕樹…小説と同じ名前…?」

「そう、裕樹は僕なんだ…」

ナツも裕樹の名を味わうように、繰り返し口にする。

指先の触れ方も求めるような手の動きから、受け入れる前に形を知ろうとする触れ方に変わる。

その手つきはまるで、裕樹の下腹部を宝物のように崇めるように。

抱擁の余韻のまま唇が重なり、裕樹は両手で右の乳肉を持ち上げるように触れた。

触るたびに形が変わる柔らかさに裕樹の目は奪われた。

変化するその形を目で追っていた時に、谷間の奥に黒い点に目が止まる。

(ホクロ…?)

名前に加えて見つけてしまった、ナツの体の秘密。

それは始まりに過ぎず、この身体にはまだ知らない秘密がきっと無数にある。

そう思うと、裕樹の中で片栗粉を火にかけたような、どろりとした何かが溶けていく──
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