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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第11章 月下美人のデカダンス
葵の中で最後の一滴を振り絞るように、裕樹の下半身は何度もビクン、ビクン、と痙攣した。

包み込むような余熱と、まだ残る脈打ちが離れがたく、裕樹はしばらく動けずにいた。

視線の先で、葵は肘をついて床に伏し、肩を上下させながら小刻みに震えている。

「ひくっ、ひくっ」と漏れる浅い呼吸が、裕樹の耳にだけ届いていた。

絡みつく温もりと、柔らかな肌から自身を引き剥がすように、裕樹はゆっくりと腰を退ける。

全身から力が抜けて、そのまま床へ倒れ込む。

外の雨音は、まだ遠くで鳴っている。

小刻みに震える葵の背中越しに、開け放たれた扉の向こう側を見る。

疲労の影響か、雨脚のせいなのか、裕樹から見る景色はぼんやりと滲んで見えた。

誰かに見られていたかもしれない────その想像に、先ほどまでの露出の興奮の熱が、雨にさらされた鉄のように急激に冷えて、背筋がゾクりと震える。

「葵ちゃん、扉閉めるね。ちょっと避けられる?」

裕樹の声に、葵は床を伝うように、力なく体をずらした。

その仕草を確認してから、裕樹はゆっくりと立ち上がり、扉に手をかける。

ギィ、と軋んで、視界が閉ざされ、雨の帳も遮られ、小屋の中に重たい静かさだけが残った。

閉ざされた扉の周りだけが一層暗く、お互いの輪郭だけかろうじて浮かぶように見える。

そのすぐ傍ら、扉のそばで葵の姿が静かに沈んでいた。
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