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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第3章 半透明の優等生
下駄箱の前で、こよみは小さく深呼吸した。

足元にあるのは、いつも通りの上履き。
けれど、それを履く自分の手つきが、どこかぎこちない。靴を履き替えるだけなのに、時間がかかるのがわかる。
周囲のざわめきに押し流されるようにして、廊下へと足を踏み出した。

教室の前では、もう何人かのクラスメイトが席についていた。ガラリと扉を開けた瞬間、声が飛んでくる。

「こよみちゃん、おはよー! あれ、私より遅いってめずらしいね。寝坊?」

笑顔でそう言ったのは、同じ班の佐藤さん。何の悪意もない、ただのあいさつ。でもこよみは、反射的に笑顔を作ることができなかった。

「……うん、ちょっとだけ」

返した声は小さく、少しかすれていた。

まもなくして、廊下から軽やかな足音が聞こえ、松山晴美が教室に入ってくる。パンツスーツの裾が、歩くたびにふわりと揺れる。

「おはようございまーす」

そう言って笑みを浮かべながら、鞄を教卓に置く。その動きが止まったのは、視線の先にこよみの姿を見たからだった。

「……おはよう、こよみさん。ちょっと体調悪い?」

松山は問いかけたが、こよみは「大丈夫です」と小さく首を振るだけ。
松山の表情には一瞬のひっかかりがあったものの、すぐにいつもの笑みに戻った。

朝の会が始まり、出席をとる時間になる。

「月島こよみさん」

「はい」

手を挙げて返事をするこよみ。松山の視線が、彼女の横顔に注がれる。

──月島こよみ。彼女はいわゆる理想的な生徒だ。

いつも静かに、丁寧に、指示を聞いてくれる。成績も優秀で、ノートも整っている。
教室ではいつも控えめで、けれど周囲をよく見ている
。口数は少ないけれど、たとえば係の仕事を代わってあげたり、落とした消しゴムをそっと拾ったり──彼女の優しさは、行動として表れる。

そしてなにより、その姿は印象的だ。

腰まであるまっすぐな黒髪。前髪はきれいに揃えられ、肌は白磁のように白い。教室の蛍光灯の下でも、どこか静かに際立って見える。
まるで、何か別の時間から来た子どものようだ。

──でも、今朝のその瞳は……どこか遠くを見ていた。そんな気がした。
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