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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第3章 半透明の優等生

朝の光が、また教室を照らしていた。
ざわめき、笑い声、椅子を引く音。
こよみは、誰とも視線を合わせることなく、自分の席へと歩いた。
チャイムが鳴ると、松山先生が教室へ入ってくる。
パンツスーツのすそをなびかせ、教卓の前に立つ。
「おはようございまーす。はい、それじゃあ朝の会、始めますよー」
出席確認が淡々と進んでいく。
「月島こよみさん」
「はい」
手を挙げて答える声は小さく、けれどはっきりしていた。
そのあと、松山は手元のプリントを取り上げる。
「はい、昨日出してもらった“親への感謝”の作文の下書き、回収しまーす。書けてなくても大丈夫ですよー」
各列ごとに順に回収が始まる。
こよみは、ランドセルの奥からクリアファイルを取り出し、二枚の紙を机にそっと置いた。
プリントには、きちんとすべての項目が埋められていた。
「名前」「年齢」「好きな食べ物」「仕事」──。
そのうちのひとつ、「お父さんはあなたのことをどう思っていますか?」という問いにだけ、
淡い鉛筆の筆跡で、静かにこう書かれていた。
『あいしている』
そこに違和感を覚える者は、教室には誰もいなかった。
松山先生も、それを確認するように目を走らせたが、特に表情を変えることはなかった。
回収された紙は、他のプリントと一緒に積み重ねられていく。
その日、教室は、いつもと同じように授業を始めた。
ざわめき、笑い声、椅子を引く音。
こよみは、誰とも視線を合わせることなく、自分の席へと歩いた。
チャイムが鳴ると、松山先生が教室へ入ってくる。
パンツスーツのすそをなびかせ、教卓の前に立つ。
「おはようございまーす。はい、それじゃあ朝の会、始めますよー」
出席確認が淡々と進んでいく。
「月島こよみさん」
「はい」
手を挙げて答える声は小さく、けれどはっきりしていた。
そのあと、松山は手元のプリントを取り上げる。
「はい、昨日出してもらった“親への感謝”の作文の下書き、回収しまーす。書けてなくても大丈夫ですよー」
各列ごとに順に回収が始まる。
こよみは、ランドセルの奥からクリアファイルを取り出し、二枚の紙を机にそっと置いた。
プリントには、きちんとすべての項目が埋められていた。
「名前」「年齢」「好きな食べ物」「仕事」──。
そのうちのひとつ、「お父さんはあなたのことをどう思っていますか?」という問いにだけ、
淡い鉛筆の筆跡で、静かにこう書かれていた。
『あいしている』
そこに違和感を覚える者は、教室には誰もいなかった。
松山先生も、それを確認するように目を走らせたが、特に表情を変えることはなかった。
回収された紙は、他のプリントと一緒に積み重ねられていく。
その日、教室は、いつもと同じように授業を始めた。

