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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第4章 花籠の中のつぼみ
この春、こよみは小学5年生になった。

教室も席も担任も変わり、新しい一年が始まって一か月。ようやく皆がこの環境に慣れ始めた、五月の朝。
窓から射し込む光は、春のやわらかさを失い、少しずつ夏の強さを帯びてきていた。

ざわざわとした声、椅子を引く音、ランドセルの金具がぶつかる小さな音が混ざり合う。
黒板の端には「5月12日(火)」と昨日のままの日付が残り、誰も気に留めないまま時が流れていた。

ガラリ、と勢いよく教室のドアが開く。
「おはよーっ! みんな元気かー!」背筋を伸ばし、担任の滝本隼先生が笑顔で入ってきた。
国語と体育を担当する今年度からの赴任者で、声はやたらと大きく、天井から跳ね返って耳に届く。
日焼けした肌に短髪のツーブロック、スポーツ選手のような体つき。笑顔は眩しいほどで、ジャージの袖からのぞく腕は太く、黒板にチョークを走らせるときの動きまで力強い。

「元気ー!」と何人かの男子が声を返し、女子の一部も手を振った。
「お、月島も元気か?」いきなり近づいてきて、こよみの肩をぽん、と叩く。
軽くのつもりなのだろうが、彼の手のひらの熱と重みがやけに残る。「……はい」小さく返事をして、こよみは視線を机に落とした。
「そうそう、その調子!」と明るく言って、滝本先生はそのまま隣の席の子とハイタッチを交わす。

机の間を縫うように歩きながら、「今日は天気いいな! 帰りたくなっちゃうな!」と冗談めかした声を飛ばす。
笑う子もいれば、話に乗って「わかるー!」と答える子もいる。
けれどこよみには、その明るさが重たくのしかかった。教室全体が一段高い温度で動いていて、自分だけがそこに馴染めないような感覚。
声の大きさも、距離の近さも、体育の授業前に鳴らされるホイッスルのように心をざわつかせる。

「はい、席につけー」チョークが黒板を叩く音と同時に号令が響く。
こよみはランドセルから教科書を取り出しながら、小さく息を吐いた。

今日は体育がある。眩しい日差しの中、あの掛け声と、土の匂いのする運動場。嫌だな……と胸の奥でつぶやく。
そう思った瞬間、背中にうっすら汗がにじむ気がした。

今日も、長い一日が始まる。
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