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家は檻。〜実父の異常な愛〜
第1章 始まりの夜
外の寒気のせいで、まだ頬が冷たく赤いまま、こよみは台所に飛び込んだ。
母はすでに夕飯の支度を始めている。
すべての料理を出来たての状態で食卓に並べるために、母はいつも早めに動き出す。

この呉服店では、帳簿付けも家事も母の仕事だ。
家は古くて広く、掃除だけでもひと苦労なはずだが、それに加えて店の経理まで任されている。
「私は楽なほうだよ」と母は笑うけれど、その言葉を真に受けるのは難しい。

今夜の献立は、白ご飯、牡蠣の天ぷら、長芋の千切りのかつお節和え、ほうれん草のおひたし、ねぎと豆腐の味噌汁、かぶのぬか漬け……季節の食材を取り入れた、見事な夕食だった。

こよみは慣れた手つきで味噌汁の具をかき混ぜ、かぶのぬか漬けを危なげなく包丁で切りそろえる。

やがて、店を閉めた父が台所に顔を出す。
天ぷらを揚げる母の背後に立ち、「お、今日は牡蠣か」と、いつになく機嫌がよさそうだった。

こよみはまた、朝と同じように、出来あがった料理を居間の食卓へ運ぶ。
そして、家族での夕食が始まる。

父は嬉しそうに、牡蠣の天ぷらをポン酢につけて頬張る。
食卓には笑顔と湯気が立ち上り、温かな音が満ちていた。
まるで、何もかもが幸せな家庭であるかのように。

夕食のあと、こよみはリビングでお気に入りのアニメを観る。
無免許の天才医師が、法外な手術費を請求しながらも神業のような技で患者を救う物語だ。
そのキャラクターなら、自分のこの股の痛みだって治してくれるんじゃないか……
そんな空想がふと頭に浮かぶ。

その横顔を、父がビールを片手に、無言で横目に見ていた。

アニメが終わると、お風呂に入る。
湯気のこもる浴室。鏡の前で、こよみはそっと自分の身体を確かめた。
異変はないか、あざはできていないか。
何も見えないことに、少し安心しながら湯船に身を沈める。

「今日もちゃんとした」

頭の中でそう呟き、何度か繰り返す。
自分に言い聞かせるように。

入浴を終えると、こよみは机に向かい、宿題にとりかかった。

鉛筆を持つ手が、かすかに震えている。
文字を間違えても直さず、しばらくそのまま動きを止めた。

父の足音が廊下を通り過ぎる。
その瞬間、ピタッと手を止め、息を殺す。

そして少ししてから、ふっと笑う。

「夢をいつまでも考えてちゃだめだよね」

ぽつりと、誰にも届かない独り言をこぼした。
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