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くっつく二人
第1章 陰キャとの出会い
「ねえ休み時間無くなるんだけどぉ!」
 美希は後ろの机に肘をつき、子供みたいな仕草で後ろの男子に話しかけた。

 美希の後ろの男子、それは山原。
 別に好きって訳じゃないけど、話し相手として、ちょうどいいから、こうして机を借りている。簡単に言えば美希にとっての愚痴を吐く場所。

「知らねえよ。お前が悪いんだろ」

「えぇ何その言い方ひどっ!」
 つい、こんな風に行っちゃうけれど、本当は愚痴を聞いてもらって感謝している。だって、こんなこと他の友達には絶対言えないもん。

「ってかさ、なんで毎回、俺に話しかけてくんのよ」

「席が後ろだから」
 単にそれだけ。席が後ろだと話しかけやすいじゃん?

「えぇ……まぁ可愛いからいいけどな」
 みんな自分の事を可愛いと言っている。別に自分自身は可愛いと思ったことないから、どうとも思わないけど。

「おい無反応かよ! 言っておいて損したわ!」

「あぁ、ごめんごめん! その言葉、聞き飽きてきてさぁ」
 何せクラス全員から言われているものだから、美希に「可愛い」は通用しないのだ。

 あ、でも、一人だけ居た。まだ可愛いって言ってもらってない人。

 それは、いつも席で一人ぼっちの男の子、蒼(あお)。
 誰から見ても恐らく陰キャと思われるだろう彼は、何を考えているかも分からなくて、存在感も薄くて……正直、今みたいに存在を忘れてしまうこともあったりして……(悪いとは思っているんだけどね!)。

「ぉ……? 美希さぁ、さっきから蒼のこと見てるけど、どうかしたの?」

「いや、まだ蒼さんからは『可愛い』もらってないなぁって思って」
 それで今、ちょっと行こうか迷ってたり。

「マジで!? やっぱ、そういうのって欲しいの?」

「まぁ、欲しいのもあるけど……全てをコンプリートしたいっていうかさ……!!」
 クラス全員が美希に注目する存在。
 男女とか関係なく、全ての人気を集めてみたい訳なのよ……!!

「はは、美希は凄いなぁ。俺じゃ絶対できないよ、いきなり『可愛い』もらうなんてさ。まだ初対面だろ?」

「そーだよ? ……じゃ、行ってくる」

「おう、頑張れよ!」


(今まで何十人もの生徒に『可愛い』と言われた私なら、陰キャ一人を堕とすのは余裕なこと! 今回も余裕で成し遂げるっ!)
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