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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第16章 さようならを貴方に~誰かあたしを拾って愛して。

「お母さんはあたしを捨てて男の人のところに行っちゃった。お父さんは海外に出張中で、あたしひとりなの……好きな人にも振られちゃったし寂しくて悲しくて――おじさん、あたしをあたためてくれますか?」

 視線を上げておじさんを見れば、口呼吸をしている。
 荒い息を繰り返し吐いていて、半ば興奮気味だった。

「そうか、そうか。おじさんがうんとあたためてあげるよ」

「優しくして――?」

 上目遣いでおじさんを見上げれば――。

「もちろんだとも! うんと優しくするよ」
 おじさんは大きく頷いた。

「おじさんが優しくしてる最中に邪魔が入っても困るし、人目につかないあっちの茂みに行こうか……」
 木々に囲まれたそこは死角になっている。
 おじさんに手を引かれるがまま、素直に移動した。

「さあ、ここに立って」

 おじさんに指示されるまま、あたしは太い木を背にして立った。

「名前は何て言うの?」
 耳元でぼそりと囁かれて、吐息があたしの胸の谷間にかかる。
 熱を宿す身体は、その吐息でさえも反応した。
「ん……澪」
 ほんの少し濡れた声で答えた。

「澪ちゃんか、いい名前だね。澪ちゃん、おじさんとチュウしよっか」

 腕を引っ張られて顔を上げれば、おじさんの分厚い唇があたしの口を塞いだ。
「ん……ぅう」
 鼻から匂ってくるお酒の匂いは胸焼けを起こしそうなくらい不快なもの。
 だけど、あたしは、今どうしても人肌のぬくもりが欲しかった。


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