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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第17章 ただ腕の中で漂う。

「大丈夫、酷いことはしないよ……」
 優しい声が落ちてきた。

「……君を綺麗にしたいだけなんだ。厭ならすぐに止めるから――」
 そう言うと、唯斗さんは腕をあたしの背中に回したままの状態で髪に触れた。
 頭皮から毛先へ、ゆっくりなぞられて、シャンプーが泡立っていく……。
 その手つきがあまりにも繊細で優しい動きだったから、ため息をついた。

「……フフ」
 唯斗さんが笑う。
 その声がくすぐったくて首を竦めた。

「いつも思っていたけれど、やっぱり澪ちゃんの髪の毛は細くて柔らかな綺麗だ。さあ、流すね……」

 これから何をするのか、あたしにわざわざ動作確認をしてくれる。
 こんな優しい人、あたしは他に知らない。

 シャワーの流れる音が聞こえたかと思えば、泡を流してくれる。

 あたしはまた、安心してその腕に身を委ねることができるんだ……。


「今度は首と肩ね」
 バスタブの中に泡が浮いている。
 その泡をお湯ごとひとつ掬い上げると、あたしの首と肩をなぞる。

 その指先は流れるように緩やかなS字を描く鎖骨へと進む。


「胸に触れても良い?」
「……は、い」
 訊ねられて、ドキドキする。
 声は散々喘いだからほとんど掠れて出ない。
 それでも唯斗さんはしっかり聞き取った。

 唯斗さんの大きな手があたしの胸に触れる。
 その触れ方は今までにないくらい優しくて、とても丁寧だった。


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