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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第4章 蜜に溺れる身体。

「――俺とは嫌? 抱かれたくない?」
 心配そうに訊ねてくる声は、あたしがひとり寂しくて泣いていた時に宥めてくれた、あの声音。
 今からエッチなことをするような、そんな雰囲気じゃない。

 唯斗さんはきっと、あたしが唯斗さんに抱かれること自体が嫌なんだと思ったみたい。


 ――違う。
 あたしは気がつけばずっと、唯斗さんに恋をしていた。
 ずっとずっと好きだったし、抱かれることさえ夢見ていた。
 嬉しい気持ちはたくさんある。
 だけど、だからこそ。
 唯斗さんに全部を見られるのは恥ずかしい。

 それに……。

 唯斗さんはすごく大人で、冷静で――だからこんなふうに女の人を抱くなんて考えられなかった……。
 そりゃ、男の人だからこういう行為は絶対すると思うけれど、でも、こんなふうに触れるとは想像もしていなかったんだ。

 できるなら、このまま唯斗さんに抱かれたい。
 初めては好きな人がいい。
 
 だからあたしは両手を解いて首を振った。

「ちがっ! 違うの……恥ずかしい、から……」
 呟くような小さな声で本音を唇に乗せる。

 そうしたら、唯斗さんは安心したのか、詰めていた息を吐き出した。
 目の前にあった薄い唇が弧を描くのが見える。
 ほんの少し微笑むその表情が、すごく綺麗で……。
 あたしの胸が高鳴った。
 唯斗さんが微笑んだというたったそれだけのことでも胸が熱くなる。


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