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魅惑~甘く溺れる身体と心。
第1章 あたしの好きな人。

 だけど――1ヶ月後のある日。
 いつだったかな、その日はお父さん、急患が入ったらしくて帰宅できなくなっちゃったんだ。いつも通り吹奏楽部で帰りが遅くなっちゃって、唯斗さんが迎えに来てくれて、そうしたらタイミング悪く雷が鳴って、外は大粒の雨の土砂降り。

 だから夕飯を一緒にして、泊まっていってもらうことにしたんだ。
 お父さんの弟さんだし、ずっと送り迎えしてくれて、安全面は確保されてるから知らない仲でもないし。

 だけどそれがいけなかった――。
 夜中、ひとりで泣いているの、唯斗さんにバレちゃったんだ。
 普段はどんなに平静でいようとしても、あたしはやっぱりお母さんに捨てられたことがショックで、実はひとりになった時に、こっそり泣いていたんだ。

 
 お父さんにもバレずにいられたのに。
 夜中、泣いているあたしの部屋に入ってきて、抱きしめてくれたの。
 悲しかったね、ってずっと背中を擦って慰めてくれたの。

 そこからかな、少しずつ恋愛感情を持つようになっていった。
 高校生の時も、吹奏楽に入って唯斗さんの好意にずっと甘えていた。

 ある日、高校の帰り道で、唯斗さんからふと感じた視線が少し熱を帯びていた気がして、思い切ってお父さんに唯斗さんへの気持ちを打ち明けてみたんだ。


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