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銀狼
第7章 還るべき地
長官と呼ばれた男は馬を降り、賊達の末路を呆然と眺める。
「…これは…狼の仕業か…!! 」
それを聞いた銃士隊の部下たちは急いで馬を降りると、周りを囲むように外を向いて背にしていた銃を構えた。
獣の気配…今は、感じないが…。
「こやつ等で間違いはないのか……!? 」
「はい、この者達がお嬢様を拐った賊に間違い御座いません…」
「何ということだ…っ」
拐われた愛娘を探してここまで来たというのに
…間に合わなかったのか?
よもや狼の奇襲にあっていようとは…っ。
「──…セレナ」
セレナの父──アルフォード侯爵は、絶望のあまりその場に膝から崩れ落ちた。
「何故よりによってラインハルトの森に…ッッ」
壮年ながらも端正な顔を、激しい憤りに歪ませる。
娘を狙った賊達と、それを襲った狼。
そして、守れなかった自分自身──。
このやりきれない思いを何処にぶつけろと言うのだろうか。