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銀狼
第7章 還るべき地
だからだろうか…
巨大な獣と密着していながら、此処に恐れを感じないのは。
チュン、チュン
彼女の位置からは眠る狼の横顔も見える。
頭の上には小鳥が止まっていて、セレナの気も知らないで呑気に…可愛らしく鳴いていた。
それでも起きない狼をじっと見つめた。
彼の毛皮は月夜の元では銀に輝くが、今はどちらかと言えば白に近かった。
“ 綺麗…──なんて、思ってしまう ”
汚れのひとつも見あたらないその毛皮は、森を駆け回る獣の物とは思えなくて。
やはり普通の狼と逸脱した彼の雰囲気は、こんなところからもきているのだろうか。
…パタッ
「──あっ」
ふと…彼女の目覚めに気付いた小鳥が飛び去ってしまう。
──それに反応して
眠っていた銀狼の耳がピクリと動いた。
息を止めたセレナ。
銀狼は頭を僅かに起こして振り返り、彼女の姿をその眼に捕らえた。
「───…」
「……っ」
大きな獣の眼と、じっと視線が合わさる。