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銀狼
第7章 還るべき地
それからラーイは変わってしまった。
一度人間に噛みつくことを覚えた彼は、ふとした瞬間に野生の本能を剥き出した。
鎖に繋がれたラーイは柵の向こうのセレナを威嚇し、興奮して毛を逆立てながら、恐ろしい唸り声をあげる──。
そんな姿を彼女の前でたびたび見せた。
───
それからすぐの事だった。
ラーイが銃を持った部下達に連れていかれ、二度と帰ってこなかったのは。
『 殺さないで…──ッッ 』
これはつい先日、セレナが銀狼に向けた言葉。
彼に囚われた夜…命を乞うために跪き、喉を震わせながら告げた懇願。
けれどそれだけではない…。
セレナはもっと、ずっと昔に
壊れんばかりに、同じ言葉で泣き叫んでいたのだ。