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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
セレナは桃色の森をひとりで歩いていた。
地面はうっすらと背の低い草花で覆われ、若緑の絨毯が敷き詰められているかのように手触りも良い。
“ こんな綺麗な場所があったなんて… ”
垂れ下がった枝の花を愛でながら彼女はひとときの憩いを楽しんでいた。
『 あまり遠くへは行くな 』
あの男はそう彼女に念を押した。
しかしそんな言い付けを守るつもりはない。
「誰があなたの言うことなんて…っ」
隙をついて逃げないと、と、セレナは心の中で強がってみる。
先程はする必要のない話をベラベラと喋ってしまったが、彼に心を開いたわけではない。
セレナは自分の行動を軽率であったと反省していた。