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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
か、からかわれた…!!
「ひどい人ね、あなたって…」
「フっ…」
セレナが何か言おうとすれば次の果皮が押し込まれる。
やりどころの無い羞恥を胸に、彼女は大人しく食べるしかなかった。
───
「…ねぇ」
「──…?」
実の毒がまだ残っているのか、手足に軽い痺れを感じる。
その状態のセレナを抱き上げ引き返す銀狼。
「どうしてあなた…わたしの名を知っているの?」
その道中、当然のように沈黙が流れる最中( サナカ )、セレナは意を決して口を開いた。
事あるごとに語尾に付けられる自分の名前──。
疑問に思いつつずっと口には出さなかったが、気付いていないわけではない。
「…覚えがないのか」
「?」
「私に教えたのはお前だろう…」
「…えっ、わたしが言ったの?」
「そうだ」
道々に現れるウサギ達は、銀狼の姿を目に止めると逃げようとはせずに少し道を譲る。
そして彼が腕に抱くセレナを不思議気に見上げるのだった──。