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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
銀狼はゆっくりと動き出した。
彼の帰還に気付いた狼も穴から姿を現しその周囲に集まりだす。
益々激しさを増した雨が──
彼等の毛皮を打ち付けた。
耳鳴りのように頭の奥まで響いてくる。
彼は仔狼の身体を岩場の上に静かに寝かせ
前に立ち尽くすセレナと一瞬だけ目を合わせると、その横をすり抜けて湖へと進む。
セレナは振り返ったが、彼は此方に背を向けた。
そして銀狼は畔で一度立ち止まると湖の奥──滝壺へと飛び込んだ。
バシャっ...
滝の奥に映る影が
獣から人の形に変わっていく。