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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
大地を叩く雨。
そして──出口の洞窟から音がする。
「──…っ」
咄嗟に向けた彼女の目に映ったのは、銀の毛皮を纏った大きな狼だった。
「ロー!…──ッ」
セレナは駆け寄ろうとしたが、その足はすぐに止まってしまう──。
ぬかるんだ地面から止まった勢いで泥が跳ねた。
洞窟から出てきた銀狼。
その口に、焦げ茶の狼が咥えられていたのだ。
「……そんな…」
小さな狼の姿
──まだ子供である事は明らかである。
咥えられていた仔狼は…背中から血を流し、ぐったりと動かなかった…。