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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
「私の牙は先程、人間の喉を噛み切ったところであるが……?」
彼はセレナに近付いていった。
口に付いた血痕を掬った水で清めながら…。
「…我等を以てして泣くのか。狼はお前達の敵だというのに」
「…っ…殺し合いに、敵も味方も、ないわ」
雨か涙かわからぬ水滴がセレナの頬を伝い落ちる。
「……どちらも悪いわ…!! 」
「……」
「どっちも…っ、可哀想だわ……」
顔を両手で覆い、そしてか細い肩を震わせていた。
目を細めたローは彼女の目前までたどり着くと、湖から出て片膝を付いて座る。
彼女の手を剥ぎ取り、顎を掴んで自身に向けさせた。