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銀狼
第8章 雨(アマ)の鎮魂歌
辺りに充満するのは…隙間ない雨によって閉じ込められていた自然の青い香り。
二人だけの世界へ、ローとセレナを包み込んだ。
「…ちゃんとッ…あなたも涙を流すべきだわ…!! 」
「生意気な事を言うじゃあないか…」
顎を鷲掴んだ手に力がこもり、ローは彼女の腰を捕らえた。
互いにずぶ濡れのマントとドレスが張り付く。
「──…その様な顔は、私に見せるべきではないな……? セレナ……」
「……っ」
そして……互いの唇も吸い付くように重なった。
崖から突き出た木々の枝より落ち続ける水滴は、湖にいくつもの波紋を描いている。
──いつの間であろうか
雨はもうあがっていた。