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銀狼
第3章 銀狼
つまりここがラインハルトの森なのか。
男達に無理やり連れ去られてきたセレナは、理不尽にもまた新たな危険に放り込まれたということだ。
“ 逃げないと…っ 逃げないと! ”
「──…ッ…痛っ!! 」
突然、走るセレナは鋭い痛みに顔をしかめた。
棘のある蔦( ツタ )に腕を引っかけたのだ。
左腕のドレスが破け、赤い血が滲む。
“ …怪我…っ ”
いけない…。これは不味い。
狼は血の匂いに反応すると教わったことがある。
このままだと見つかってしまう……!
ガサッ
「──…!!! 」
その時、背後の草むらが蠢いたのを感じた。
本当に動いたのかどうかはもはや定かではない。セレナはそれほどの恐怖に半ば我を忘れ、混乱するままに忙しなく辺りを見渡した。
止まっていた足がまた動き出す。
「…もう……っ…いや…!! 」
腕の痛みを気にする余裕もなく、死への恐怖に追い立てられる。