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銀狼
第3章 銀狼
だが無我夢中で走り続けた彼女の前に現れたのは、高く切り立った断崖絶壁だった。
「行き、止まり…」
果てなど見えない壁に前を塞がれ
そして…背後から聞こえてきたのは狼の遠吠え。
「ハァハァ…、っ──…ハァ…」
長く走った彼女の身体は極限まで疲労し
それもあってか、絶体絶命の状況に対して、抗う気力が瞬く間にすぼんでゆく──。
クー… クー…
深い森は暗闇に包まれ、うっそうと茂った木々は月の光さえも遮断していた。
セレナは四肢から力を失い、絶壁を前に膝から崩れ落ちた。
“ どうしてこんな事に……? ”
自分はどのくらい逃げてきたのだろう。
ずいぶんと長い時間を走った気がするけれど、実はそれほどでもないのかもしれない。
もしくは……
二度と戻れないような深い場所まで、迷い込んだのかもしれない。