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銀狼
第10章 討伐
列の後方から別の馬が彼に近付いてきた。
「…どうした。何か怪しい場所が見つかったのか」
「いえっ、それがまだ…!! 」
馬に乗った指揮官は首を横に振る。
「先程から犬たちは怯えています。やはりこの周辺、狼の匂いが濃いのは確かなようですが…」
それは実に妙であった。
連れてきた数匹の猟犬は狼の匂いを既に嗅ぎ付けている様子だ。近くにいる筈なのに…その姿はいっこうに見えない。
「…弱ったな。聖地と呼べるような場所が、本当に近くに存在するのか」
アルフォード侯は懐から地図を出す。
彼等が探しているのは、銀狼が潜むと言い伝えられている狼の「聖地」。
…だが未だに聖地はおろか、狼の一匹にさえ遭遇しない。
この先は崖が立ちはだかるだけで行き止まりだ。
「これだけ捜索を続けたにも関わらず、収穫は無しか…」
「こうも視界が悪いため、部下達の手際も悪くなります」
うっそうと茂る草花と隙間なく伸びた樹木。
木々から垂れ下がるトゲ付きの蔦が兵士の捜索の邪魔をしていた。