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銀狼
第11章 儚き運命
彼女の手は鮮赤な血で染まっていた。
その両手でローの顔を挟み、セレナは自らの額を彼の其れに押し付けた。
ぴたり付いた額から、互いの熱が交換される…。
「許して下さい…!! 」
「──…それ は、無理だ…」
「──…ッ」
蚊の鳴くような小さく掠れた声でローが応える。
「我等が人間を許すことは…っ…有り得ない…」
「……っ」
怨みが消えることはない
「その怨みを背負うのも…ッ…勝者の宿命だ」
彼は力の入らぬ手を
セレナの頬へ…そっと添える。
「……」
これほど蔑み、嫌悪した
人間───。
「──…だがお前は赦そう」
「…っ」
「…お前だけは赦してやる…っ…セレナ…」
「…ロー…」
だからお前は死ぬな。
人間の、ほんの数十年という短い一生を──
お前はこのまま生きていけ。
「…忘れる な‥‥」
「……ッ…?」
「‥‥‥此処に‥‥在る‥‥」
そして、また…──
「───」
頬に添えられたローの指が
静かに離れる。
「……いや」
脱力した其れは岩肌に落ちて
ぺたんと弱々しく音を立てた───。