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銀狼
第3章 銀狼
高く切り立った周囲の崖。
その頂上から突き出るように生えた木々は、葉の代わりに、セレナが見たことの無い深い赤紫色の花をつけていた。
夜の闇に浮かぶその色…口紅のように艶めいた花びらが、一枚、二枚と降ってくる。
岩壁から突き出た根や巻蔓は、身を悶えながらもの狂おしい指のように、空を捉えてうねっている。
…それ等の妖しさが、美しかった。
「──…」
この光景に見とれてしまうセレナ。
神々しい世界に心奪われていた。
──しかし、そんな時
風に舞った花びらを追った彼女の目が
あるもので止まった──。
「……お…おかみ……?」
すぐには信じられない。
彼女がその顔から色を失うに、数秒の間を必要とした。