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銀狼
第6章 獣の愛
投げつけられたそれに驚いたのか、身を縮こまらせた仔狼。
…怯えているのは彼女だけではないように見える。
セレナの方を気にしながらパンに近づき
そしてその狼は布に顔を近付けて中の匂いを嗅ぎ始めた。
「……?」
パンが、狙いなの…?
「…あなた…お腹減ってるの?」
思わず問い掛けたセレナに答えるように仔狼はパンを鼻で押し返す。
…それは返すというより、せがむような素振り。
勝手に中身を奪ってはならないと、銀狼が狼達に言ったのだろうか。
グルッ、グルル…ッ
仔狼は小さく唸りながらパンを突っつく。
「…わかった…わかったから…!」
セレナは恐る恐るパンを彼から取り戻すと、無造作にちぎる。
そして、狼の前にコロンと転がした。
──パクっ
「あ、食べたわ…」
転がったパンはあっという間に狼の腹のなかにおさまった。