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銀狼
第6章 獣の愛
我等がパンを食べる?
「──とすれば私たち狼に、貴様ら人間のおこぼれを糧に生きろと言うのか」
「…ち、違うわ」
「馬鹿馬鹿しいことだ…!! 」
辺りの空気がピリリと痛い。
怯えるセレナは少しずつ後退し、その背が洞穴の壁についてしまった。
「……覚えておけ」
「……っ」
「人間など我々にとって、数ある獲物の内の一種に過ぎない」
我等にパンを与えるなど…
あまり図に乗るな。
「…何故、むやみに人間を殺すのかと聞いたか」
「……!! 」
「簡単な話だ……其れは我等が、生き残るため」
その低い声に心の臓までを握られるような錯覚を起こし、セレナの息が詰まる。
彼の怒りを全身で感じ、ガタガタと肩が震えてしまう。
たとえ姿が人だとしても…やはりこの男は恐ろしい狼だ。
「──…なら…どうして、…ッ…あなたはわたしを食べない、の……!? 」
身を小さくした彼女は今にも消え入りそうな声を、辛うじて絞り出した──。