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銀狼
第6章 獣の愛
「いたッ…!! 」
転がされたセレナは急いで上体を起こし、銀狼を見上げて座ったまま後ずさった。
銀狼は彼女の目の前にパンを落とす。
「この中身はお前の食糧として用意したものだ。……我等が食す物ではない」
「……ッ」
「あの子供には、まだ理解できぬようだがな」
「…どうして…っ…駄目なのよ…!? パンでお腹を満たせるなら、それで何よりじゃない!」
パンで満たせるなら…
人を食べずにすむのなら…!!
「むやみに人を殺さなくても、よくなるじゃない…!! それの何が悪いの!? 」
「……」
納得できないセレナは恐怖を吹き飛ばすように声を大きく反論した。
この男の邪魔さえなければ…少なくともあの瞬間、子供の狼と自分は、喰う喰われるの関係ではなかったのに。
──しかしそれを聞いた銀狼は、口の端を僅かに上げると非憎気に笑ってみせた。
片頬に刃のような冷笑を浮かべる。