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華のしずく~あなた色に染められて~
第27章 【月華~月姫-TSUKIHI-~華のしずく~】 幻の蝶
その無邪気な問いに対して、月姫は応える術(すべ)を持たなかった。汚れのない無垢な心に、憎しみや憤りといった醜い感情を抱かせるのは、いかにしても忍びない。月姫が憂い顔で微笑むと、千手丸はそれ以上何も訊ねてこようとはしなかった。利発な子ゆえ、母の顔に浮かぶ翳りを見たのかもしれない。詳しい事情は判らずとも、このことについては月姫に訊ねてはならないと子ども心に感じたのだろう。