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華のしずく~あなた色に染められて~
第27章 【月華~月姫-TSUKIHI-~華のしずく~】 幻の蝶
犬張り子の玩具が千手丸の枕許に置いてある。父の訪れを待ち焦がれ、はしゃぎ疲れて、他愛なく眠り込んだ我が子の顔に月姫はじっと見入った。
その夜、秀信がいつものように館を訪れた。
「いかがじゃ」
気遣わしげに千手丸の寝顔を覗き込む秀信に、月姫は微笑んだ。
「風邪をこじらせたそうにござりまする。只今、お医師の調合なされし薬湯を頂いて呑ませておりますれば、直にようなりましょう」