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華のしずく~あなた色に染められて~
第16章 【夢のなか~華のしずく~】 光の祈り人
「洗礼名よ。本当の名は千都(ちづ)というの」
「千都」
秀吉はその名を口ずさんだ。何という美しい名であろう。少女には似合いの名だと思った。千都と名乗った娘は秀吉に背を向けて遠ざかってゆく。その華奢な後ろ姿を秀吉は茫然と見送った。
千都、千都と幾度も心の中で繰り返すと、それは、まるで砂糖糖子の甘さのようにひろがってゆく。まるで恋をはじめて知り初(そ)めた少年のように、胸がときめき、高鳴った。