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華のしずく~あなた色に染められて~
第20章 【朱夏~華のしずく~】
とにかく、一刻も早く兄たちを探さねばならなかった。さもなければ、誰か信頼のできそうな者に屋敷までの帰り道を訊ねねばならない。藍丸が唇を噛みしめて一歩踏み出そうとした時、背後からふいに声をかけられた。
「もし、娘さん、どうかされましたかの」
振り返れば、三十半ばほどであろうか、商人らしい壮年の男が立っていた。背はさほど高くはないが、丸顔に人の好そうな笑みを浮かべている。背に大きな荷を背負っていた。