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華のしずく~あなた色に染められて~
第22章 其の壱~飛花~
その時、ふいに突風が強く吹き抜けた。開け放たれた障子の向こうには庭が見える。時治がふと眼をやると、庭先の桜の枝が風にざわめいていた。
この寺の庭の桜は鬱金(うこん)といって八重咲きのやや大ぶりな花で、淡い紅ではなく白色が特徴である。突風に桜の枝がざわめき、無数の白い花びらが雪のように舞いおどり、一斉に散ってゆく。その壮絶なほどの光景の中、瞬く間に燃え広がった紅蓮の炎は消えることなく、秀吉を呑み込んで燃え続けた。