この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
華のしずく~あなた色に染められて~
第23章 【夕桜~華のしずく~】其の弐~夕桜~
「お方様?」
傍らの茜が心配そうに帰蝶を見た。昨日の夕刻の秀継の訪れ以来、まるで放心したような帰蝶の様子をずっと案じていたのだ。
「秀継様―」
帰蝶は反物をひろげ、涙の滲んだ眼で眺めた。薄紅色の光沢のある美しい布地にやや濃いめの桜の花びらが一面に散っていた。いかにも帰蝶の好みそうな色柄である。まめやかな心配りは怠らないが、どこまでも朴訥な良人がまさかこのような京土産を自分のために求めていたとは想像だにしなかった。
傍らの茜が心配そうに帰蝶を見た。昨日の夕刻の秀継の訪れ以来、まるで放心したような帰蝶の様子をずっと案じていたのだ。
「秀継様―」
帰蝶は反物をひろげ、涙の滲んだ眼で眺めた。薄紅色の光沢のある美しい布地にやや濃いめの桜の花びらが一面に散っていた。いかにも帰蝶の好みそうな色柄である。まめやかな心配りは怠らないが、どこまでも朴訥な良人がまさかこのような京土産を自分のために求めていたとは想像だにしなかった。