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O……tout……o…
第1章 おとうと
 2

 母親が再婚をしたのが、今から15年前、わたしが中学1年生の春であった。
 その3年前に突然父親が交通事故で亡くなり、母親は必死にわたしを育ててくれていた。
 そして年月が経ち、わたし自身もゆっくりと大人の階段を登り始めた頃に…
 再婚すると伝えられた。

 それは間もなく中学入学という時期であり、母親の苦労と心労を理解できる年齢となり…
 もしかしたらそのうち新しい父親が、ううん、再婚するかもしれない…
 と、ぼんやりと思っていた頃に再婚を知らされた。

 その頃のわたしは少しマセていたのかもしれない…
 なんとなく心の片隅で母親の再婚を予想していたし、周りの同級生の数人が苗字が変わったり、転校したりして、それらが親達の離婚や再婚のせいだと親友から教えてもらい…
『きっとそのうち葵ちゃんのお母さんもそうなるんじゃない?』
『え…新しいお父さんてこと?』
『うん、苗字も変わっちゃうかもね』
『えぇ、なんかヤだなぁ…』
 こんな会話をした記憶があり…
 今、顧みると、なんとなくそんな思いと想像を俯瞰的にしていたような気がする。

 だから突然の母親からの再婚話しは、比較的冷静に理解できた…
 だがその当時のわたしには新しい父親という存在よりは…
 義理の弟…
 つまりは、父親になる男の連れ子という存在に、動揺した。

 それは当時の思春期の心の成長のバイアスに、大きな影響を与えたのだった…

『新しいお父さんになるのよ…』
 それには心の準備ができていた。

『新しい弟になる真司くん…しんちゃんよ…』
 これがわたしの…想定外。

 しかも…
 その真司くん、しんちゃんは、とっても小さくて、可愛くて…
 いや、一目見た瞬間から、わたしの心を揺らがすほどに可愛いかったのだ。

 え、なんて、かわいいの…
 ちっちゃくて、栗毛色の柔らかそうな髪…
 まるでお人形さんみたい。

 今思えば、あの揺らぎはある意味『一目惚れ』という感情だったのだと思う。

 だけどあの頃は、まだ12歳の小学6年生…
 そしてマンガばっかり読んでいた、恋愛の『れ』の字すら知らない女の子であったのだから。

 だから、ただ、可愛いくて、かわいくて…

 ううん、まるで…

 小さな、愛らしい、ペットを初めて見たような感情だったのだと思う。

 そう、あの頃は、まだ………



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