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O……tout……o…
第1章 おとうと
 4

『明日から急に仕事が忙しくなっちゃうからさぁ、暫く逢えないかも…』
『そうなの?』
『うん、残業が連チャンになりそう』
『どのくらい?』
『うーん来週いっぱいかなぁ』
『ええっマジで』
『うんマジ』
『えーようやく来週から生理も解禁なのにぃ』
『え…うん、ごめんね』
『なんとか一週間ガマンしたのにあと一週間またガマンしなくちゃならないの?』

『あ…う、うん…』
 そう、タカシは…
 まるで彼は、ヤルことしか考えてない…

『だって今度新しい企画任されるかもだしさぁ』
 わたしは某保険会社の営業主任、そして『ライフプランナー』等の資格を持っている。

『ここで頑張れば、部長に認められそうなのよ』
 頑張って認められれば、係長へ一気に出世の可能性が見えそうであった。

 だが…
『その部長って、男だよね』
『え…』
『なんかぁ、ちょくちょく部長って葵ちゃんの口から聞こえるんだけど…』
『え…』
『なんかさぁ…なんかだよなぁ…』
『え……』
 まさかのタカシの…
 下衆な……嫉妬心の言葉であった。

『だって前もさぁ、残業で遅くなって部長にご馳走になった…なんて何回かあったよねぇ』

『え…』
 わたしはそのくだらない嫉妬心に、呆れて、絶句してしまう。

『なんか怪しくね』
『え…ま、マジで言ってるの』
 キッと、睨む。

『い、いや、じ、冗談だよ…』
 慌てて誤魔化してきたが、本気の嫉妬の言葉だろう。

 それよりもこのタカシには…
 わたしの残業続きの大変さ、疲労、寝不足等の心配なんて関係なくて…
 ヤルことしかアタマにないのだろう。

『まだ、学生のタカシにはわからないよ…』
 怒りと苛立ち、そして呆れ…
 そんな想いが心に渦巻き、そう冷たく言い放った。

 タカシは歳下の大学生…
 『法科大学院生』という、いわゆる大学6年生に充たる。
 将来は弁護士を目指しているそうだ。

 だが、そんなわたしの嫌味には、全く気付かなく…
『あぁ、あと一週間もガマンしなくちゃならないのかぁ…』
 と、ひとりで自分勝手に苛立っている。

 そして、挙げ句には…
『ねぇ、あと一週間もガマンするんだからさぁ、葵ちゃんのお口でシテくれない?』
 
 その言葉に、わたしはキレてしまった…

『もお、帰ってっ………』

 それ以来の、一週間振りのLINEである。
 


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