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助教 沙霧
第4章 研究の日々(2)
 駆け込んだ女子トイレの大きな鏡の前で、沙霧は自分の姿を凝視した。
 短い髪を耳にかけ、顎を引いたストイックな風貌。だが、鏡の中の瞳は、間違いなく潤いを帯びている。

 昨日まで、自分は完璧な「研究者」であったはずだ。学問という高潔な砦の中に身を置き、俗世の情欲を排斥してきたはずだった。だが、誉という見知らぬ男から届けられた「理解」という名の愛撫が、その砦に小さな亀裂を生じさせかけている?

 いや、亀裂は初めからそこにあったことを沙霧は知っている。気づかないふりをし、亀裂が広がって奥底に眠る淫らな本能が顔を出してしまうことのないよう、冷徹で理性的でいることを自分に強い、日々演じているのだということを。
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