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助教 沙霧
第7章 秘密のいとなみ ~深夜の自室~
 脳内では、和泉式部の歌が、歪んだ欲望とともに再生される。

  『あらざらむ この世のほかの 思ひ出に……』
――死後の思い出にするために、もう一度だけ貴方に逢いたい。

 その「逢いたい」という切実な願いは、今の沙霧にとっては、誉という名の暴力的な理解者に、心も体もズタズタに引き裂かれたいという渇望と同義だった。

 沙霧は、自らの指を誉の手だと思い込もうとした。

 60代、初老の男性の、無骨だけれど皺の寄った大きな手...
 自分の豊かな胸も片手ですっぽり包み込むほどの...

 それは、自分を敬うふりをしながら、最も残酷な場所で突き放し、蹂躙する男の手。
 自分自身を弄りながら、沙霧は同時に心の中で誉に乞い願う。

 もっと...
 もっと....私を....壊して...
 学問も、矜持も、この身体も、すべて貴方に差し出しますから....

 激しい震えが沙霧を襲った。
 床に顔を押し付け、声を殺して咽び泣く沙霧。

 快楽の頂点に達した瞬間、彼女が目にしたのは、真っ白な虚無と、自分を憐れむように見下ろす誉の、氷のように冷たい微笑だった。

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