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内密妊娠 今日だけはあなたの奥さん
第1章 内密妊娠 今日だけはあなたの奥さん
「失礼します……」
「あっ……先生ですか?」
「ええ、|誓恵《せいけい》病院産婦人科勤務医の|鷹村《たかむら》と申します。今日はよろしくお願いします……」

 鷹村と名乗ったその男性は古びてしわの寄った白衣を無造作に身にまとっていて、長めの黒髪はあまり整えられていないのか所々に寝癖が立っていた。

 黒縁の眼鏡の向こうに見える顔は30代前半ぐらいに見えて、口元からのぞく綺麗な白い歯に加えて髭もちゃんと剃られていて清潔感は最低限保たれていたけど、私は想像していたイメージからはかけ離れた「担当医」の姿に緊張を隠せないでいた。


「こちらこそ、その……今日はよろしくお願いいたします……」
「あまり緊張なさらなくて大丈夫ですよ、今日1日で終わることですので。どうぞリラックスしてお掛けください」
「ありがとうございます」

 鷹村先生は気難しそうに見えて話し始めると明るい性格のようで、緊張して席から立っていた私は先生の言葉に少し安心して再び椅子に腰掛けた。


「それでは処置室に移る前に、術前のインフォームド・コンセントを行わせて頂きます。ところで、今日は何とお呼びすればよろしいでしょうか?」
「えっ? あっ、じゃあ、麻里子さん……でお願いします」
「分かりました。では私のことも今日1日は鷹村さんとお呼びください。先生などと呼ばなくていいですからね」
「そうなんですね、ではそうさせて頂きます」

 野暮ったくて不器用そうに見えるルックスでも、彼が一人の男性として私を少しでも安心させようとしていることはその親切な態度と笑顔からよく分かった。
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