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路地裏文化研究会
第2章 路地裏文化研究会
 中村さんが冗談めかして笑ったので、わたしもつられて笑ってしまいました。

 「『学校が終わってからでもいいですか?』なんて言われちゃうと、たまらないなぁ…」
 「えっ、どうしてですか?」
 「だって、そんなセリフ、学生さんじゃなかったら言えないじゃない?」

 中村さんは、わざとらしいくらいに感心してみせました。

 「お見受けするところ、〇〇女子大ですかな?」
 「あ、はい、そうです」
 「場所柄、〇〇女子大のお客さんも多いんですよね。年度はじめは教科書がよく出るんですよ」

 今更ながらお店の中を見渡します。すると、わたしが欲しがるような、そういう本や雑誌が置かれている一角が目に入りました。このお店にもあるんだ…。お店の一番隅にあって、表通りからも死角になっています。何よりも、置かれている本や雑誌の数が多そう…。もし、いつものお店よりもこのお店を先に知ってしまっていたら、研究会に入りたいなどと訪ねることもなかったでしょう…。

 「文学部かな?」
 「あ、はい、当たり…です」

 自分のプロフィールを少しずつ露わにされて、何だか一枚ずつ衣服を脱がされていくような気持ちになります。

 「じゃあ、きっと本を読むのが好きなんだね。どんなのが好きなの?」
 「どんなの…」
 「好きなジャンルとか…あるんでしょ? 教えてくれたら揃えておくようにするから」
 「好きなジャンル…」

 それは…、あの一角にある…。もう、揃えていただくまでもなく、揃っているのです。でも、わたし、もう名前も住所も大学も学部も知られてしまって、もう下着だけになっているぐらいの気持ちなのです。折角のご厚意でしたけれど、好きなジャンルは…やっぱり言えませんでした。ここには〇〇女子大の学生も来ているらしいですし…。

 「あ…ありがとうございます」

 わたしはお礼だけ言いました。何か適当なことを言えばよかったのかもしれません。それこそ、就職面接で同じことを問われればそうしていたでしょう。でも、なぜか、出任せを言うようなことは躊躇われたのでした。

 都会での生活に埋もれるだけでしたので、わたしのことを知ってくれる人、そして歓迎までしてくれるという人たちとの出会いを大切にしたかったのだと思います。
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