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『春の嵐』
第3章 序章。
朋華は、恵樹と一年生の早い時期に仲良くなった。何がキッカケだったのか憶えていない。でも、最初は、学年のアイドル梨々香の弟分という意識だった。梨々香がいつも連れて歩いていて、梨々香とは距離があった朋華は近寄り難い存在だった。でも、教室での席が隣だったり、グループ別活動が一緒だったり、いろいろあった。

そんななかで一緒に行動する恵樹の優しさに触れて、恋愛感情とは異なる好意を抱いた。梨々香の言う可愛いという言葉が指す意味もわかるけど、それとは違う感覚。

香菜が抱いた恵樹への『鈍い』という感覚は朋華にはなかった。それは朋華自身も相当に『鈍い』方だったから。

恋愛感情とは異なる好意・・・。姉に

「好きなんでしょ。その男の子が」

と、揶揄われても、答えられない朋華。

「梨々香ちゃんみたいにハグしたいと思っているんじゃないの?」

姉に訊かれても、何とも言えない朋華。

確かに羨ましいとは思う。弟にハグするように、恵樹にできたら・・・。そう思わないわけではないけど・・・。

そこまで望んではいけない・・・。恵樹くんは梨々香ちゃんの・・・。

遠慮があった朋華。

それに、恵樹くんは梨々香ちゃんにハグされたいのであって、わたしがしたら嫌がるかもしれない・・・。

それに、わたしはハグしたいだけ・・・。恋愛感情ではないのだから。

学年が上がっても、恋愛感情ではないと言い聞かせていた朋華。

横で見る姉の目には、どう見ても恋愛感情にしか見えなかった。そんなに恋しいなら、せめてバレンタインデーにチョコレートくらい渡せばいいのに・・・。

朋華の姉は、朋華の鈍さにヤキモキしていた。そう、単に自分の恋心に気が付いていなかっただけの朋華・・・。

自分の思いが恋愛感情ではないと思っていただけで、朋華の思いは傍から見れば、間違いなく恋愛感情だった。

初心な朋華には、それが恋愛感情だと自覚できなかっただけ・・・。
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