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邂逅
第1章 邂逅
人里から遠く離れた広大な山地、その片隅にあるとある山。
山腹には木々が生い茂り、渓流は亀裂のような道筋を描く。この辺りの山地ではありふれた風景だ。
唯一、山の中を一人黙々と移動する女の姿だけは山地一帯でかなり珍しいものだった。

刃物を携えて山腹を隈無く巡る。その足取りに迷いはなく、軽装でありながら大岩を易々と登っていく。山の環境にすっかり慣れている様子だった。

一通り森を物色すると川辺に移る。

(あら......見間違い、じゃないわよね。)

前方を横切る渓流の先に人影を見つけた。この近辺で自分以外の人間を見かけたことは今まで一度もなかった。
その相手、もう一人の女も身軽な出で立ちで、身のこなしも軽やかだった。山で過ごすことに馴れているのはあちらも同じようだ。ここで過ごし始めたのも昨日今日の話ではないのだろう。
周囲に視界を遮るものは無く、お互い相手の姿が確認できる。

(同類、かしら?きっと考えてることも同じよね、得体の知れない人間が身近にいるのは気持ち悪くて仕方ないもの。)

手にしている刃物をしまって相手の方へと歩み寄る。向こうの女もほぼ同時に刃物をしまって歩いてくる。腰元にしっかり刃物を収め、渓流の向こう側をじっとりと見つめながら、水の浅いところへ足を踏み入れる。足元では水流と戯れながら、手を伸ばせば相手の体に触れられるくらいまで距離を詰める。

流水の只中で相対する二人の女、淵音(ふちおと)と空形(そらがた)。
顔立ちこそ違うものの、身なりといい雰囲気といいどこか重なるものがある。背の高さもほぼ同じで体型もよく似ている。
唯一分かりやすい違いは髪で、淵音は鎖骨を覆い隠してしまうほどの長さだったが、空形は肩に触れるか触れないかというぐらいの長さだった。

近づいてもお互い一向に言葉を交わさない。
据わった目、頬の全く動かない表情、正面を向いたまま立ち塞がる体。どれを取っても穏やかな展開を望んでいる人間ではないことは想像できる。
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