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闇夜を彩るアラベスク
第5章 獅子座の男
息子の嫁である真美子さんが、週に二度ほどこっちの家にやって来ては男やもめの義雄の世話をしてくれる。
良くできた嫁だと感心する。
肝心の妻の幸子は、義雄の浮気癖に愛想をつかせて10年前に熟年離婚した。
そのときは義雄も50歳ということで、新たな女房を探す気満々だったが、会社をリストラされて年収も減り、その日暮らしの交通整理のガードマンというくたびれた男に見向きもする女など皆無で、いよいよ女遊びも年貢の納め時かと思っている。
「じゃあ、お義父さん、洗濯物、ここに畳んで置いておきますから」
「ああ、いつもすまないねえ。あっちの家の幸子の世話もしてるんだろ?大変だろ?」
「いえいえ、私はほら、若い頃に両親を亡くしているし、お義父さんとお義母さんを本当の親だと思って、こうして親孝行出来るのが嬉しいんです」
真美子は40手前の39歳。
本当なら育ち盛りの我が子の世話で振り回される年齢だが、息子と結婚して15年にもなるのに子宝に恵まれていない。
「それよか、息子の義次とはうまくいってるのかい?」
「はい?」
「いや、ほら、なんていうか子作りの方は頑張ってるのかい?」
「ああ…あの人ったらアッチの方は淡白で…ふたつきに一度あるかないかという有り様で…」
「じゃあ…子作りは…」
「ええ、あきらめました。こればかりは授かり物ですけれど、子種を入れてくれないことには懐妊なんて期待する方が難しいですものね」
気立ての優しい女だけに、子煩悩な母親になるだろうに、世の中ってのは理不尽だなと義雄はわが息子の不甲斐なさにがっかりした。

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